エレンとミカサ、アルミンが行ってみたい壁外の世界 進撃の巨人SS

超大型巨人が襲撃してくる数年前。
それはエレンとミカサ、そして幼馴染であるアルミンがまだ幼かった頃の平和なお話。

ここはシガンシナ区の北西に位置する小高い丘の上。
炎で揺らぐ頼りない灯りを片手に、アルミンは両手には収まらない分厚い本を抱えていた。

まん丸の月が綺麗な夜だった。
子供のアルミンは目を輝かせて、夜の真っ暗な丘を駆けた。
小高い丘の頂上には同じく優しい灯りを点すランプを片手にしたエレンとミカサが立っている。

「遅いぞ、アルミンっ!」

息せき切って駆けるアルミンに気づいたエレンは、片手にしたランプを高々と持ち上げた。
隣にいたミカサは揺れる灯りを見つめ、彼へ忠告した。

「エレン、そんなに振ったら火が消える」

炎を点したランプが消えないように、ミカサはそれをエレンの手首を掴んで頭上で固定した。
灯りを頼りにアルミンがやっと頂上へ登ってくる。
彼は肩で息をしながら、安定した岩の上にランプと持っていた書物を置いた。

「ごめんっ。親が二人ともなかなか寝てくれなくて」
「大丈夫、私たちもさっき来た所だから。気にしなくていい」
「それでっ!? 例のあれってこの本?」

岩の上に置かれた書物をエレンが徐に掴む。
古びた表紙にはこう書かれていた、『壁外の世界』と。
悪いことをするなら夜、というなんとも子供じみた考えだったが彼らは至って真面目だった。

エレンの両親もアルミンの両親も、壁外の世界は巨人の巣窟だと考えている。
自分たちの息子や娘が壁外の世界へ憧れを抱いていると知れば、それはもうカンカンに怒るに違いない。
けれど芽生えた好奇心や探究心は消えることなく、エレンとアルミンの心に燻り続けていた。

だから時折、彼らはこうやって満月の夜に集まって、壁外の世界に夢を馳せるのだ。

ミカサだけはいつも冷静で、エレンが行くならどこまでも付いていくという確固たる信念の元、この集まりに参加していた。

二つのランプを岩に並べ、月明かりと炎の灯りを頼りに、アルミンは本のページを開いていく。

「俺は絶対、この”海”を見てみたいな! 水が本当にしょっぱいか飲んでみたい」
「僕は”砂漠”かなぁ。砂だけの大地なんて、歩くだけで楽しそう」

繊細な絵画と共に紹介されているのは、壁外の世界でしか見られないものばかり。
珍しい光景に目を輝かせる二人の幼馴染の隣で、ミカサだけは空を見ていた。

「ねぇ、ミカサ。君はどこに行ってみたい?」
「ほっとけよ、アルミン。コイツは外の世界に興味なんてないんだから」
「私はエレンが行きたい所に行く。エレンを一人にさせられないから」

空を仰ぎ見ていたミカサが、ふとアルミンが開いた書物に目を落とす。
そこに開かれた絵画の説明に、指先を走らせた。

「でも、これ……。これが見てみたい」
「なになに?”オーロラ”天から降ってくる光のベール、だって! すごいな!俺も見てみたいっ!」
「やっぱりミカサは女の子だね。こんな綺麗なものに一番興味を惹かれるんだから」

ある一定の条件を満たさなければ決してみることが出来ない”オーロラ”という現象に、ミカサは心の中で想いを募らせる。
特別な条件で見られたそれを、壁外の人々は神の降臨した証明だとした。
そうして”オーロラ”を見た者は、どんな願いでも叶えて貰えると説明書きがあった。

そんな”オーロラ”をもし、この三人で見られたなら。

ミカサの願いはきっとそれだけで、叶えられたも同然かもしれない。

「出来ればこのまま、変わらないで」

小さな小さなミカサの願いは、隣で表情を輝かせる幼馴染たちの声と混ざり合って夜に溶けていった。

エレンミカサアルミン

« »

スポンサーリンク